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終わる世界

思うがままに壊れようと

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  • 12/11/09:41

小話。山しゃちょ。


冬だ。
寒い。

けれど、
好きだ。


冷たい空気。
済んだ空色。
遠い泣き顔。


「あんたを思い出すから、冬は好きですよ」
「あのな。思い出すって…過去の人間か。俺は」
「違いますけど。何て言うんですかね。………んー」


あの頃は。


こんなにも、誰かを求める自分を知らなかった。
世間に対し、ただのガキのあがきがどれほど無意味かも。
知らなくて、わからなくて、そうして誰も教えてくれなくて。


何度も。


「あの頃のあんたは、もう居ないから」


そんな言葉を、本人に言う日がくることも。
空気のように、そうして絶対な何かを。
居ない誰かを求めるより、今と昔を比べることも。


「けど。お前は、まだ…あの頃のままだ」


穏やかで。
幼くて。
そうして、残酷なまま。


「だって。あんたは、俺が好きでしょう」


そんなことを自信をもって言うなんて、馬鹿だ。
けれどその馬鹿の言葉通りだから、どうしたものか。
人が誰かを求めるのは、ぬくもりに餓えているから。
熱が過ぎ去れば、この関係にも終末がくるだろうに。


なのに、まだ。


もう随分と同じ季節を繰り返しても、熱が冷めることはなく。
冷めるどころか、ただ募っていくばかり。
一緒に居たいだなんて、そんな言葉は言い飽きた。


「言ってろよ、馬鹿」
「言いますよ、何度でも」

他の誰かは求めない。求めるのは、ただ一人だけ。
寒い冬。些細でありきたりなその日に、想うのは。

互いの、ぬくもりだけ。
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